“侵襲”を内視鏡で低減化に努めています
当食道がんは消化器癌手術のなかで最も大きな手術の一つとされています。これは、手技的に難易度が高いということと、患者さんに及ぼす“侵襲”つまりストレスも大きな手術ということです。
なぜ食道がん手術が大手術かというと、それは手術創が3か所に及ぶからであり、それは食道の解剖学的な位置が問題だからです。
食道はこのように、喉と胃をつなぐ臓器です。つまり、頚部から胸腔内を経て、腹腔にわたっている細長い臓器です。しかも、心臓の後ろ、脊椎の前、大動脈の横と、胸腔内の一番奥の方に位置しています。 そのため食道を取り除くためには、頚、胸、お腹と、3か所における手術操作が必要となってきます。(図1)
口側の食道を切断し、肛門側の食道、つまり胃を切断して食道を摘除し、その後、細く胃を作り変えた細径胃管を頚まで吊りあげて口側の食道断端と縫合します。 このように手術野が、頚から胸、そしてお腹にかけての広い範囲に及ぶので、患者さんに加わるストレスも相当なものになります。(図2)
そこで当科では、最もストレスが大きい胸部操作を鏡視下で行うことにより、食道がん手術の低侵襲化を図っています。従来の手術では、頚、胸、お腹の3か所に傷ができますが、当院では、このように、一番侵襲が大きい胸部操作だけを鏡視下で行うことにしています。(図3)