病院長挨拶

  • 2019_

-天才の心意気-
〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2013年 春号 病院長挨拶より〜

 新病院をオープン致しまして、1か月が経ちましたが、病院移転に伴う診療制限のため先月の収支が着任以来経験したこともない大赤字となった以外は、心配していた重症患者さんの新病院への搬送を含めまして、全てが順調でございました。皆さま方のご支援のお陰と深く感謝申し上げております。ただ、どこの建築においても存在するような細かな不具合は、清水建設にて、現在、鋭意、改修中でございます。

 

 新病院をスタートし、多くの患者さんからの「一流ホテル(あるいは博物館)のような病院で診療してもらい大変満足し、感謝している」という有難い声が、益々職員のモチベーションを上げ、質の高い医療に拍車がかかっております。

 また、診療面においても、常々当院のレベルの高さは英文論文にして世界の権威ある雑誌に発信しておりますが、この4月1日から、何とはるばるチリから当院の手術を身につけたいとのことで中堅外科医が研修に参ります。このことからも、当院の質の高い医療の実践をお伺い頂けるかと存じます。

 ただ、患者さんの新病院に対する主な苦情としまして、「案内板が小さすぎて分かりにくい」という声をお聞き致しております。実は、当院と致しましてこれは既に予想していたことでございまして、今後の「美しい街創り」を見据えて、病院内部の美しさも極めて重要視致しております。とは申しましても、病院でございますので、当院はその解決策と致しまして、玄関には「コンシェルジュ(案内サービス)」を、要所要所には笑顔の職員を配置し、有難いことに、心優しいボランティアの皆さんも案内に協力して頂いております。また、力作のパンフレットも作成致しておりますので、どうぞ、いつでも、職員やボランティアの皆さんにお気軽に声をお掛け下さい。そうすれば、きっとご満足いただける当院受診になると確信致しております。どうか宜しくお願い致します。

 

 ところで、最近、新幹線で大阪の学会に行く機会がありましたが、その帰りの列車の時間待ちでプラットホームのキオスクを覗きましたら、将棋の天才・羽生さんの文庫本があり読んでみました。そうしましたら驚きました。

 羽生さんは、皆さんも知っての通り、弱冠26歳で全ての将棋のタイトルを獲得し、羽生7冠として知られた将棋の天才です。ところが、この羽生さんが、「負けるために指す将棋も多々ある」と言うんです。「へぇー、将棋って勝つためにやる勝負師のゲームじゃないの」って目を疑いました。そして、「7冠の時よりも、3冠の今の方がずっと将棋が好きで、楽しくて、面白い」そうで、その言葉の意味するところは、「将来へ向かって、美しい棋譜を残すこと」と分かり、天才・羽生は将棋を芸術に高めようとする心を持つ本当に尊敬するに値する人物と、とても嬉しくなりました。

 

 人は必ず死にますので、私たちの子孫の将来がもっともっと良くなるように、少しでも何か良いものを残さなくてはなりません。日本の医療もそうですが、将棋を含む芸術にも、街創りにおいても然りです。それが心ある日本人が創らなければならない脈々たる歴史でございます。若いにもかかわらず、羽生3冠の心意気や本物の天才の面目躍如、誠にあっぱれと言うほかありません。

 

 現在、わたくし共の熊本総合病院は、診療時間以外は一般市民の皆さんにも無料でご利用できる350台収容の駐車場整備のために、旧病院を解体中でございます。その期間中はこれまでよりも少し、駐車ならびに駐輪にご不便をおかけ致しますが、しばらくは、公共交通機関でのご協力を宜しくお願い申し上げます。

 

 今後とも、「自分自身がかかりたい質の高い医療を実践する」に加えて「美しい街創り」で、「公に一肌脱いで」参りますので、皆さま方のさらなるご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

平成25年3月



 

2013.10

-「倍返し」と「泣き寝入り」-

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2013年 秋号 病院長挨拶より〜

 

2013.7

-粋な理念-

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2013年 夏号 病院長挨拶より〜

 

2013.3

-天才の心意気-

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2013年 春号 病院長挨拶より〜

 

2013.1

-兎、龍、蛇、そして100年後へ-

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2013年 創刊号 病院長挨拶より〜