病院長挨拶

  • 2019_
迷い込んで
〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 新年度号 病院長挨拶より〜
 

「独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO) 熊本総合病院」がスタートし、既に1年が経過いたしました。全職員はJCHOというブランドの下、気が引き締まる思いとのことで、さらに質の高い医療の実践をしながら、JCHOの使命である「地域医療のみならず地域包括ケアの推進」に向かって大いに公に貢献するように努力いたしております。すべては、医師会、熊本大学教授陣、国・県・市行政ならびに市民の皆さま方のご支援の賜と深く感謝申し上げております。

 

JCHOという独法になり1年、その使命を当院がどのように果たしていくかについて、全職員が懸命になって「暗中模索」中です。全国の病院は、各々異なる地域性を持っております。従いまして、画一的な中央主導では折角のJCHOという新しい機構の特長が生かされません。そこで、病院長会が発足し、本部との風通しの良い連携の下、病院長会が積極的な発言をして、本来の使命を推進することになっております。

 

「暗中模索」と言えば、先日、九州医事新報のK編集長が当院に取材に来られ、「いつもまちを歩いて探索することにしており、八代駅から熊本総合病院までの道を迷い込みましたが、とても楽しかった」と伺いました。その時、ワシントンDCを引き合いに出して、アメリカの建築家ケビン・リンチが「まちというものは、分かり易くなければならないが、『迷い込む楽しさ』もなければならない」と言っていますよ、と言いましたら、それはいい話を聞きましたといい顔をされました。

ワシントンDCは、原住民のインディアンを追い出して造ったまち全体が計画された新しい都市です。従いまして全体は碁盤の目のように区画されていますが、国会議事堂やホワイトハウスに向かって別の道路が放射線状に斜めに交差しますので、番地自体は分かり易いのですが、『迷い込む』要素がふんだんに付加されています。例えば、その放射線状の道路には「サークル」や「スクエア」などの無くても良い障害がワザと付けられており、特に車で行くと「スクエア」では目標とする道路は間違い易く、中心市街地へ向かっていたのに気がついたら閑静な豪邸地で、逆にとても得したような気分にもなって散策して、『迷い込んで楽しかった』、さあ、ワシントン記念塔というランドマークの方向へ再出発、ということになります。

 

一方、私が世の中で最も厳しいものの1つと考える「真の研究」は、業務研究のような「安全研究」ではなくリスク極まりない前人未到の研究ですから、間違いなく十中八九『迷い込んだら屍』です。私も何度も『迷い込んで死』にました。

しかし、熊本大学大学院教授陣の先生方は、診療・教育に加えて、世界に冠たる素晴らしいご研究を推進なさっておられ、正に超人集団です。さらに、その結果として、様々な分野の世界的な賞も受賞されておられ、本当に頭が下がると同時に我々卒業生の名誉であります。

つい先日、NIH(米国国立衛生研究所)でお世話になった北海道大学名誉教授が89歳で亡くなられました。そのY名誉教授のお言葉が『迷い込んで失敗を楽しむ』であり、「そのような研究者でなければ研究をする資格がない」とキツイお叱りを何度も受けました。私の場合は、ついにNIHの大ボスからもY名誉教授からもその期待に応えることはできませんでしたが、その失敗の副産物のおかげで、かけがえのない友人や経験・知識を得、生き方にも繋がりました。

 

今年度も引き続き、わたくし共の熊本総合病院は全職員が一丸となって、「医療と共に、公に一肌脱ぎ」ながらJCHOの一員として地方創世に貢献できるように、さらに精進して参ります。本年度も、皆さま方のさらなるご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

平成27年 4月



 

2015.10

盤根錯節

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 秋号 病院長挨拶より〜

 

2015.7

地方を姥捨て山にしない

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 夏号 病院長挨拶より〜

 

2015.4

迷い込んで

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 新年度号 病院長挨拶より〜