病院長挨拶

  • 2019_
地方を姥捨て山にしない
〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 夏号 病院長挨拶より〜

 

「独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO) 熊本総合病院」がスタートし、既に1年以上が経過いたしましたが、どこに属しているのか?どんな役割をするのか?などまだまだご質問が多いので執拗いようですが、「厚労省医政局に属し」、特に「地域医療のみならず地域包括ケアの推進」を使命としておりますので、改めましてご周知のほどお願い申し上げます。そのブランドの下、全職員はさらに質の高い医療の実践をしながらその使命を遂行し、大いに公に貢献するように努力いたしております。そしてそのすべては、医師会、熊本大学教授陣、国・県・市行政ならびに市民の皆さま方のご支援の賜と深く感謝申し上げております。

 

さて、ご承知の通り、日本は超高齢化社会に突入しており、現在、65歳以上の高齢者は4人に1人となっております。さらに、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達するために、介護・医療費等の社会保障費の急増が懸念されている訳です(2025年問題)。従いまして、国はその社会保障費の削減を目的として、「在宅医療」を推進しています。ところが、多くの国民が懸念するように、「老老介護疲れ」に象徴される重大な危険性を孕んでおります。

 

実は、私の父は肺がんの全身転移で死にましたが、丁度、私が大学院で研究中でしたので教授から数ヶ月お暇をいただきまして主治医となり、父を我が家の座敷にて正に「在宅医療」を行い天国に行ってもらうことができました。数年後、父の姉もパーキンソン病の終末期となりましたので、父の介護時に困ったことを鑑みて我が家を相当なお金をかけて改修し、ベッド・バス・トイレを一連のバリアフリーの特別住居として、万全の設備で「在宅医療」に臨みました。ところが、母も年をとってたった数センチの段差も障害となりベッドに直結したお風呂にも入れられませんし、24時間続くお下の世話も正に地獄のようで、たった2ヶ月でギブアップ、再度、病院行きと相成りました。今後の「在宅医療」の推進にあたりましては、家族が疲弊し日本の家族崩壊とならないように、訪問看護・介護・福祉などの充実に、国や地方自治体は莫大なお金をかけなければなりません。

 

一方、この6月、日本創成会議提言で「東京圏の75歳以上の高齢者を、受け入れる余裕がある全国41地域に移住推進」の方針を示したことはご存知のとおりです。そして、その中に八代市も入っております。国民の一部からは、「地方を姥捨て山にする気か」との非難の声が上がっていますが、菅官房長官の会見では「地方の人口減少問題の改善や地域の消費需要の喚起、雇用の維持・創出につながる」との地方にとって聞こえの良い発言です。前述の「在宅医療」とも直接関連することで、国や東京圏は移住する高齢者にちゃんとお金を出して、よもや地方や家族にその皺寄せをしないことが確約されれば、大賛成です。

加えて、最近、コンパクトシティーの概念が叫ばれるようになり、八代市におきましても中心市街地への相対集積率が九州でも指折りと報道されました。中心市街地に「高齢者のための住み心地の良い住居施設、市役所、公的病院、福祉・介護施設、銀行、郵便局、交番や雨でも濡れない商業アーケードが集積するまちづくり」が行われれば、高齢者は散歩しながら、毎日の日常生活に困らず、「地域包括ケア」で安心安全に暮らすことができます。そして、極めて重要なポイントですが、高齢者が街に集積されれば、前述の「在宅医療における訪問看護・介護・福祉など」も当然効率良く行われることとなり、国や地方自治体がかけなければならないお金は頗る軽減されます。

 

そしてここで、もう1つ大事なことがあるような気がいたします。それは、「まちづくり」は、安易に緊急避難的に行われるものではないということです。子孫に誇れる良いものを1つずつ計画的に脈々と、困難を乗り越えて建設していく、それが「まちづくり」であり、「文化」であり、今後、世代を超えて推進される「地域包括ケア」の本物の基盤としても重要です。そのようなまちであれば、「地方が姥捨て山になる」どころか高齢者もプライドをもって心地よく暮らせ、もちろん若い人や子供たちも集まってきます。折角ですから、この機会に、本来の「まちづくり」に繋げる工夫が必要ではないかと考えます。

 

わたくし共の熊本総合病院は、今後も引き続き全職員が一丸となって、「医療と共に、公に一肌脱ぎ」ながら、JCHOの一員として地方創生に貢献できるように、さらに精進して参ります。皆さま方のさらなるご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

 

平成27年7月



 

2015.10

盤根錯節

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 秋号 病院長挨拶より〜

 

2015.7

地方を姥捨て山にしない

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 夏号 病院長挨拶より〜

 

2015.4

迷い込んで

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2015年 新年度号 病院長挨拶より〜