病院長挨拶

  • 2019_
—美しい街創りが人を創る—
〜八代総合病院だより 『すこやか』 2010年新年号 病院長挨拶より〜

あけましておめでとうございます。

八代総合病院は、医師会の先生方、熊本大学医学部教授陣、行政ならびに地域の皆様のご支援によって、八代地域医療の主軸として社会に貢献できるようになり、まだ、国会は通過しておりませんが、「独立行政法人 地域医療機能推進機構」となることが閣議決定されました。現在、この上なく老朽化した当院の問題を解決するために、病院新築事業に着手しております。

 昨年の10月、有難いことに、熊本大学大学院消化器外科の馬場教授のご推薦によって米国外科学会フェローの称号を頂けることになり、シカゴに行きました。そして、何と17年ぶりに4年間過ごしたワシントンを訪れました。その目的は、病院新築の参考にするために、ワシントンの街並みそしてその街並みが住む人に与える影響について、薄れている記憶を呼び戻すこと、でした。

飛行機が上空に立ち込めた雲を抜けた瞬間、左手の真横にジョージ・ワシントン大学にそびえる記念塔が現れ、ぶつかりはしないかと一寸驚きました。ポトマック川に沿って、ナショナル空港に着陸しましたが、さすがに空港は完全に近代的建築に様変わりしていました。ところが、レンタカーを借りて空港を出ますと、17年前と何ら変わることのない懐かしい風景となります。方向灯を出してレーン変更しようとすると、必ず後方の車が速度を緩めて入れてくれるので、益々、風景が美しく見えます。都会の森の中を走るジョージ・ワシントン記念道路を抜けてポトマック川を横切ると直ぐに、全てがライムストーンで造られたワシントン中心部です。ペンシルベニア通りの眺望は、右手にホワイトハウス、正面が国会議事堂で、変わることのない奇を衒わない威風堂々の街並みですが、美しく温かみに溢ふれております。

ホテルにチェックインすると、黒人が来てバレーパーキングに入れてくれるので、チップを渡します。部屋に行ってみると、何と残念、窓の向こうはビルで街並みが見えません。直ぐに受付に戻って、フロントサイドに変えてくれないかと言ってみると、「あなたの予約は日本のパックですから無理です」とのこと、そこで、そこを何とかと、交渉すると、部屋のどこかを触ってませんか? そこで、「I did not touch anything !」とディズニーの映画をパクって悪戯っぽく応えますと、すぐに受付嬢もにこやかになり、ついに○○号に部屋替えとなりました。感謝の気持ちでチップをはずみます。戻ってみると、なーんと、ホテルの中心に位置する部屋で、美しい街が眺望できる素晴らしいシチュエイションでした。
次の日、早朝から、街中の建物を17年前と違った角度から探索します。8時半になると通行も増えてきましたが、是非見ておきたい○○ホテルが分からないので、慌ただしそうですが若い賢そうなビジネスマン風の男性に尋ねてみますと知らないとの事。ところが、一寸待ってと言いながら、徐に iPODを取り出すと、始業時間もあるんだろうけれど親切に検索を始めます。そして、おー、分かったよ!とにこにこして調査結果を披露してくれました。

その次の日、17年前に住んでいたアパート界隈と米国国立がん研究所を探索します。何と、懐かしいアパートもそのままきれいに整備されながら現存していました。ところが、サプライズで訪ねようとしたがん研究所は、9.11以来、セキュリティから職員でなければ入れなくなっているそうで、とても残念なことでした。近郊の大モールで買い物をして、高級ワインも買って、夕方になり市場に行って、有名なメリーランド蟹と美味しいクラムチャウダーとミネストローネスープを買いこんで、ホテルに帰還します。大体、アメリカの黒人はろくな人間がいません。汚かったシカゴでもそうでした。ところが、ワシントンでは、黒人さんもプライドを持って、親切でてきぱきしています。荷物を車から出そうとすると、「よかよか、今日は部屋まで運んでやるばい」とサービスしてくれます。それじゃあ、と、チップも奮発します。そして、全然名残は尽きませんが、もう次の日の早朝は、暗いうちに帰国です。バレーの黒人達は、もしかしたら、ファミリーだったのかもしれません。顔が良く似ていました。「もう帰るのかい?俺たちのワシントンを楽しんで呉れたかい?」の問いに、「You made me so happy!」と日本英語でリップサービス。「そう言ってくれるとおいら達も嬉しいよ。Sir!」。

つい先日、大阪に出張でした。天気晴朗で上空から大阪の街並みがはっきり見えましたが、悲しいことに、街はアバタのようでした。一体、日本の中に街並みが誇れる都市があるでしょうか?日本の設計会社と建築会社は、勉強不足の上、私利私欲に走り、大罪を犯しています。また、戦後の日本人は建物や街並みに対する美意識を忘れ、街を愛するプライドを失った人間となり、プライドを持つことができない子孫を作って、今後の日本の将来に何を残そうというのでしょうか。

 人間は皆、死に向かって一直線です。しかし、生きている間は、プライドを持って、公に貢献しなければなりません。そして、次の世代、その次の世代へと脈々と更に良いものを渡していく努力をしなければなりません。当院の職員全員は、プライドを持ったプロの医療人として「一肌脱ぐ」ことによって、最新のチーム医療を行うのみならず、子孫に脈々と引き継ぐべきワシントンのような街創りの契機として新病院を建設できれば、と考えています。

本年も、皆様方の倍旧のご指導とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

平成22年元旦

 



 

2010.10

-日本における石垣の一つたらん-

〜八代総合病院だより 『すこやか』 2010年夏号 病院長挨拶より〜

 

2010.4

-ワクワクさせて-

〜八代総合病院だより 『すこやか』 2010年春号 病院長挨拶より〜

 

2010.1

-美しい街創りが人を創る-

〜八代総合病院だより 『すこやか』 2010年新年号 病院長挨拶より〜