この度は、先ずもって、八代総合病院の新築事業の着工が、平成22年9月30日付で、厚労省に認可されたことをご報告申し上げます。

八代総合病院は、医師会の先生方、熊本大学医学部教授陣、行政ならびに地域の皆様のご支援によって、八代地域医療の主軸として社会に貢献できるようになりました。　特に、この新年度からは、熊本大学大学院　脳神経外科学　倉津純一教授、同眼科学　谷原秀信教授、ならびに同泌尿器科学　江藤正俊教授のご高配により、それぞれの診療科の優秀な常勤医による手術が再開されることとなり、また、同呼吸器内科学　興梠博次教授のご高配で当院に大学指揮下の呼吸器内科がスタートするという、新病院着工を前に、まさに記念すべき年度となりました。本当に、熊本大学医学部教授陣の先生方には特に有難いという気持ちで一杯でございます。現在、病院新築事業は着々と進展しており、既に詳細な設計がほぼ完了し、少し足踏みを致しておりますが国の認可を待つばかりとなっております。

　リーマンショック以来、日本も経済不況の直撃を受け、世の中は活気がありません。八代の中心街も近年めっきり寂れてきましたが、益々、拍車がかかっています。では、世の中が元気を出すにはどうしたらよいでしょう。私は、こんな時こそ、逆に、どんなに小さなことでも良いので信念に従って、ワクワクすることを皆で進んでやっていくことが極めて大事と思っています。

　「努力は人を裏切らない」は、雑誌「致知」に載っていた料理人の話です。主人公は、中学、高校と勉強も運動も挫折の毎日で、世に言う「落ちこぼれ」です。仕方なく、地元の居酒屋でアルバイトの毎日でしたが、地道ながらも鰹を三枚におろし手際よくキャベツの千切りをこなす自らの努力で道を切り開いてきた職人たちの姿に感動して、「腕二本と本人の努力だけの実力勝負の世界」に飛び込みました。生来不器用なため、人の何十倍も修行し苦労を重ね、一軒の小料理屋をオープンし繁盛しました。そして、更なる上を目指して、東京の銀座の一等地に自分を追い込みましたが、銀座の厳しい現実の中で自殺を覚悟した時期もあったそうです。「神様から与えられた料理の能力に感謝し、この上なく努力してレベルアップする。お客様に心からおもてなしする。料理を通じて公に貢献する。」という心を実践し、ミシュランの三つ星を獲得しました。

　先日の日本経済新聞の一面に、「街を美しくしようなんてけしからん」で始まるコラムが目に留まりました。田村明という人が４０年前に横浜市の職員となり、都市デザインの仕事を始めたばかりの頃、国土交通省の役人にこのように言われてこっぴどく叱られたそうです。「東京の日本橋でさえ高架で覆ったのだ、横浜市の真ん中ぐらい高架が走るのは当たり前だ。」田村さんは、この官僚の傲慢な言葉を生涯忘れなかった。そして、粘りに粘って、道は地下に埋め、地上に公園を造った。その後は、横浜市は景観整備に力を入れ、観光客の注目を集め、今では憩いの街として愛されている。「生活する人々が愛とプライドが持てる景観でなければ訪れる人も感動しない」と田村さん。景観を次世代に残して、８３歳で亡くなられたそうです。

　「落ちこぼれが仕事を愛し途方もない努力をした結果ミッシュランの三つ星をもらった料理人の話」　も「街を愛し美しくしたかった気骨ある横浜市の職員の話」　のいずれも、何ともワクワクする話です。ところが、ワクワクする話の陰には、必ず、血の滲むような努力が隠されていることを忘れてはなりません。その情熱がなければ決してその道のプロになんかなれませんし、その道のプロにならなければ心から人に優しくすることはできません。結局、公のために「一肌脱ぐこと」はできませんので、人をワクワクさせることはできないことになります。

はじめに、「少し足踏みを致しておりますが国の認可を待つばかりとなっております」と書きましたが、有難いことに、当院本部の全社連　伊藤雅治理事長をはじめ、ご厚意あふれる行政ならびに地域住民の方々の多大なるご尽力とご高配によりまして、新病院着工に向かって着々と進捗し始めております。そのことを念頭においてさらに質の高い医療を行いながら、「公に一肌脱ぐ」ために職員が一丸となって、ワクワクする新病院建設に向かって最大限の努力を怠らないでさらに邁進して参りましょう。

今年度も、皆様方の倍旧のご指導とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

平成２２年４月