病院長挨拶

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亡国に向かわないように
〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2024年 夏号 病院長挨拶より〜
北館アクアテラリウム
暑中お見舞申し上げます。

 例年よりも短期間で集中的な梅雨が予想されている令和6年ですが、皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか。当院は、皆様方のご支援の下、一丸となってさらに質の高い急性期医療の実践を行ないながら、JCHOの使命である「地域医療・地域包括ケアの推進」に向けて貢献するように最大限の努力をして参ります。そして、このように努力できますことは、医師会、熊本大学教授陣、国・県・市行政ならびに市民の皆さま方のご支援の賜と深く感謝申し上げております。

 ところで、日本国民の皆様がもう既に忘れつつある武漢発の新型コロナ感染症ですが、日本政府が新型コロナ対策として支出したお金の総額は一体いくらだったのかと私もですが皆様方も気になっていらっしゃるのではと思います。実は、あまり明らかにされませんが、3年間で何と100兆円を超えるお金を日本政府は国民のために供給するという思い切った決断をしたということが分かりました。そして、その財源は「特例国債」です。そういたしますと、その国債発行は日本国に多大な影響を与える大変なお金と感じますが、現在の日本の経済と社会に打撃を与えているというような声は全く聞こえて参りません。

 最近、MMT (Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)なる考えがあることを知りました。そのMMTとは、「国家が自国通貨を発行する能力を活用し、財政を積極的に運用することで経済安定と経済成長を図るという経済理論」だそうです。即ち、私が平たく考えるに「それぞれの国家が持っている需要範囲を満たす程度ならば、いくらでもその国家の貨幣や国債を発行供給しても良い」ということになるかと思います。

 実際、新型コロナ対策費として100兆円以上もの支出をしたにも関わらず日本経済や社会に全く影響を与えていないという事実は、とりも直さずMMT理論を支持しているものと考えられます。また過去、1929年に始まったあの世界大恐慌でも高橋是清の「金本位制度からの離脱と新貨幣制度による紙幣の増発」によって世界で最も早く不況を乗り切ったと言われていますが、これもMMT理論を高橋是清が先取りしたものと考えられます。
ということは、今衆目の集まる税金の35%を占めるものの100兆円に比べればたった20兆円の「消費税」などは早く撤廃して、今こそ、経済安定と経済成長を図る時ではないかと思料いたします。色々と日本のためにお骨折りされた安倍政権の最大の失策は「消費税の増税」でした。これによって、日本のGDPはドイツに抜かれて4位に転落し、一人あたりのGDPも競争力も38位に転落してしまいました。私が米国にいました30数年前は「Japan as No. 1」と意地悪を言われながらも羨望の眼差しで見られていましたのに、誠に情けないことです。その上に、「ゆとり教育」の失敗にも懲りずに、国土も狭く資源も何もないのに「働き方改革」ですから、「働き方改革」の良いところは推進し問題点は直ぐにでも改変しなければ、諸悪外国の思う壺、行く先は亡国でしょう。

 さておき、わたくし共の熊本総合病院は、本年度も引き続き全職員が一丸となって、「医療とともに、公に一肌脱ぎ」ながら「医療のみならずまちづくりにも貢献する」意気込みで、地方創生・人口増加・少子化阻止にも少しでも寄与できるように、さらに精進して参ります。皆様方のさらなるご支援を何卒宜しくお願い申し上げますとともに、本格的な夏に向かいまして、皆様方のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。



令和6年 7月吉日

2024.1

「新年早々、心が痛みます」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2024年 新年号 病院長挨拶より〜

2024.4

「報道の基本は何処に行った」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2024年 春号 病院長挨拶より〜

2024.7

「亡国に向かわないように」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2024年 夏号 病院長挨拶より〜

2024.10

「死してのち已む」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2024年 秋号 病院長挨拶より〜


島田 信也

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)
熊本総合病院 病院長
JCHO理事長特任補佐
JCHO学会院長部会 会長



略歴

1980年 熊本大学医学部卒業、熊本大学第二外科入局
1986年 熊本大学大学院卒業(医学博士)
1988年 アメリカNIH国立癌研究所主任研究員(~1992年)
1993年 熊本大学第二外科助教
2003年 熊本大学大学院消化器外科 講師
2005年 熊本市立熊本市民病院 外科部長
2006年10月から現職
2007年 熊本大学臨床教授兼任
2017年~2024年3月 JCHO九州地区担当理事
2022年 JCHO学会院長部会会長兼任
2024年 JCHO理事長特任補佐兼任