病院長挨拶

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正気の沙汰
〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2025年 夏号 病院長挨拶より〜

日本は例年になく早くも厳しい真夏に突入し、また、世界情勢は徐々にきな臭くなってきております。特に、ウクライナ戦争が終結しない中、イスラエル・イラン紛争が勃発し、トランプ大統領の仲介により6月23日に停戦合意が発表されましたが、両国とも「停戦は発効している」と認めているものの、相互の違反攻撃が報じられ、依然として不安定な状況です。現時点では、停戦は持続しているものもろく、将来も継続されるかは不透明の状態のようでございますが、皆様方におかれましては引き続きご清祥のことと拝察申し上げます。

このような情勢の中、当院は、皆様方のご支援の下、一丸となってさらに質の高い急性期医療の実践を行ないながら、「まちづくり」にも貢献するように最大限の努力をしております。そして、このように努力できますことは、医師会、熊本大学教授陣、国・県・市行政ならびに市民の皆さま方のご支援の賜と深く感謝申し上げております。

ところで、2025年現在、公的病院の経営状況は軒並み厳しく、多くの病院で赤字が拡大しています。

ご承知の通り、病院の収入を左右する最大の要素は診療報酬ですが、その水準と配分が直接的に病院経営を左右します。ところが、政府はいつものことながら、医療費増大を抑えるため、診療報酬を下げるように厳しくコントロールしております。いわゆる「一旦その気にさせた後の梯子外し」が国のいつもの手口です。従いまして、その診療報酬の抑制政策と現場の負担増のギャップが病院の経営難を深刻化させているのが現状でございます。

国は、そのような病院の厳しい状況下をよそに、病院に対して「質の高い医療を国民に」を声高らかに謳い、病院の努力はそっちのけなのに「日本の医療の質は世界に冠たるもの」と我が功績の如くに胸を張っていることは誠に遺憾であります。
一方、可哀想なるかな、それでも従順な公的病院は、本気になって「質の高い医療を国民に」を追求し、①施設整備、②高額医療機器整備、③人事院勧告に従った医師・看護師・コメディカル・事務部の人件費上昇、④電子カルテなどICT化の高額投資負担、などを唯々諾々と行っておりますので、診療報酬の抑制政策と現場の負担増の大きなギャップが生まれ、病院は奈落の底に落ちていっているところでございます。

どうか、早急に、「質の高い医療を国民に供給するための現場の負担増」に見合う診療報酬の適正改正への「正気の沙汰政策」が行われることを、心から願います。

因みに、前出のトランプも、世界の医学研究界をリードするNIH(アメリカ国立衛生研究所)にもその予算を6.6兆円から4兆円に40%も減額し、内部に24ある研究所を、私が在籍していた癌研究所(NCI)ほか4つのセンターに集約する!そうで、とても正気の沙汰とは思えません。

 さておき、わたくし共の熊本総合病院は、異常に早い梅雨明けに続くこの真夏日も引き続き全職員が一丸となって、「医療とともに、公に一肌脱ぎ」ながら「医療のみならずまちづくりにも貢献する」意気込みで、地方創生・人口増加・少子化阻止にも少しでも寄与できるように、さらに精進して参ります。本年度も、皆さま方の格別のご支援を何卒宜しくお願い申し上げますとともに、皆さま方のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。








令和7年 7月吉日

2025.1

「透明性と透明人間」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2025年 新年号 病院長挨拶より〜

2025.4

「今こそハイスキル終身雇用へ」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2025年 春号 病院長挨拶より〜

2025.7

「正気の沙汰」

〜熊本総合病院だより 『ぱとす』 2025年 夏号 病院長挨拶より〜


島田 信也

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)
熊本総合病院 病院長
JCHO学会院長部会 会長



略歴

1980年 熊本大学医学部卒業、熊本大学第二外科入局
1986年 熊本大学大学院卒業(医学博士)
1988年 アメリカNIH国立癌研究所主任研究員(~1992年)
1993年 熊本大学第二外科助教
2003年 熊本大学大学院消化器外科 講師
2005年 熊本市立熊本市民病院 外科部長
2006年10月から現職
2007年 熊本大学臨床教授兼任
2017年~2024年3月 JCHO九州地区担当理事
2022年 JCHO学会院長部会会長兼任
2024年4月~2025年3月 JCHO理事長特任補佐兼任