診療科案内

心臓血管外科

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手術を要する心疾患の多くは、以下の4疾患です。

 

①弁膜症       → 弁形成術・弁置換術

 

②冠動脈疾患     → 冠動脈バイパス術

 

③胸部大動脈瘤・解離 → 人工血管置換術

 

④心房細動      → メイズ手術


心臓手術は障害の強い弁や冠動脈および心房細動を修復するため、術後の心機能は改善することになります。破裂予防が目的の大動脈瘤は無症状ですが術後の機能低下を来すことはありません。癌手術のように周囲の正常機能臓器を合併切除する手術とくらべ機能改善の手術であることが開心術の特徴です。また癌手術のように再発はほとんどなく、長期にわたってその手術時の効果が持続します。
特に透析施設を併設する病院としては県南では初めての開心術施設となり、血清クレアチニン値が2.0以上の慢性腎臓病患者さんは7例(20%)、そのうち透析症例は5例(14%)で、腎不全患者の比率はかなり高く、また開心術症例の平均年齢は70.5歳と高齢となっています。

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自己弁を温存して長期的な弁機能のクオリティの維持を目的に弁形成術を第1選択としています。

 


1.僧帽弁形成術(MVP)

僧房弁疾患の大部分を占める僧帽弁閉鎖不全症では僧帽弁形成術がほとんどの症例で可能です。長期成績は人工弁に取り換える弁置換術と生存率に差はありませんが、病変部のみを修復または切除し正常弁尖は温存する弁形成術は、左心室心と一体となった弁のしなやかな生理的運動が維持でき、血栓症発生率低下も期待できます。7例の僧帽弁閉鎖不全症のうち6例で僧帽弁形成術が可能となっています。



2.大動脈弁形成術(AVP)

形成後の逆流確認の困難性などからまだ手技的に確立しておらず全国的に弁置換術がほとんどを占めますが、なかにはまだ若く長期的にもクオリティの高い弁形成を行う場合があります。10例の大動脈弁閉鎖不全症のうち、大動脈弁輪拡大(AAE;Annulo-Aortic Ectasia)に起因した大動脈弁閉鎖不全症の60歳未満の1例で形成術を行っています。近年、大動脈弁温存術式(David手術)が長期成績でも期待されてきており、上行大動脈からバルサルバ洞、大動脈弁輪まで人工血管で置換して新しいバルサルバ洞で弁輪拡張を是正し、大動脈弁は温存する術式です。


主心疾患の手術適応となるほどの弁膜症があっても、何年も手術をしないでいると、他の弁膜症や不整脈がさらに発生してきます。このような合併する心疾患も将来的に心機能に傷害を及ぼす場合があり、中等度以上の合併心疾患がある場合は同時に修復しています。
複数の術式により心停止時間は延長しますが、その許容範囲内の時間で平均1.6術式の手術を行っています。前述のOPCAB以外(人工心肺を使用した手術)では1.9術式を1回の手術で同時に行い、長期的にも心機能の改善の維持を目標としています。

 

1.僧帽弁疾患の進行により合併する三尖弁閉鎖不全症や心房細動は同時に修復しています。
  2例がこの3種類の術式を同時施行しています。
2.心筋梗塞後の左室乳頭筋位置の異常から僧帽弁閉鎖不全症をきたした虚血性心疾患2例に対して
  冠動脈バイパス術と僧帽弁輪形成術を行っています。
3.1.2.の症例を含め16例中8例で2術式以上を同時施行しています。
  単独冠動脈バイパス術においても高度狭窄病変は可及的すべてを血行再建しています。
  :平均冠動脈バイパス吻合数は3.7カ所。

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生理的、根治的手術を行っても高齢者では数日の安静でも脚力は徐々に低下し、歩かない期間が長いと、心機能の改善は得ても歩行努力が必要になり、十分手術の効果を実感できないことになります。そのため早く回復できるように手術の低侵襲化を図っています。

 

■OPCAB(Off-Pump Coronary Artery Bypass grafting:人工心肺は使用しない冠動脈バイパス術)

人工心肺自体は少し出血しやすくなること、血球の障害や血流障害があるため、使用しないで済めば体の負担は少なくなります。心臓の表面にある冠動脈を再建する冠動脈バイパス術は、心臓を切って心内腔に入る必要なく、工夫を重ねれば人工心肺は使用しない冠動脈バイパス術手(OPCAB)が可能です。
冠動脈バイパス術の1術式のみの患者さん12例中、10例でOPCABを施行しており、術後平均17.9日で全例自宅に軽快退院されています。


■MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery:低侵襲心臓手術)

右肋間の小切開(10cm程度の皮膚切開)で行う術式で、手術操作の入り口が狭いため、特殊な細長い器具や胸腔鏡によるビデオも見ながら行う手術と、胸骨の部分的な切開を小切開で行う低侵襲手術(MICS)です。まだ1例づつのみですが県南では初めてとなるMICS手術(皮膚切開は10~12cm)です。


■オープンステントグラフト
(Open Stent Graft:弓部大動脈瘤に対する開胸ステントグラフト治療)

ステントグラフト内挿術(血管内治療)には不適当な高齢症例などが対象になります。人工心肺や低体温体循環停止などを要する通常の開胸手術術式ですが、もっとも吻合に時間と手間を要する人工血管の弓部末梢への吻合がステントグラフト内挿術同様にステントグラフトを直接弓部大動脈に挿入することで代用する術式です。そのため人工心肺や心停止時間が縮小できます。ステントグラフト内挿術が難しかった86歳の弓部大動脈瘤手術に本術式を行なっています。ステントグラフト内挿術よりは体への負担はかなり大きいのですが、1ヶ月以内で自宅に軽快退院されています。



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術後早期の離床、歩行を実現させるために、手術の低侵襲下とともに、早期にリハビリを開始することに努力しています。開心術後は翌日からICU内でベッドの横に腰掛けて端座位、可能なら立位や足ふみ、歩行までリハビリを進めていきます。ICU内でのリハビリスペースが確保されているため、胸部ドレーンや持続点滴用のポンプ、数カ所の点滴ラインなどを整理しながら、医師、理学療法士、看護師の共同作業による術直後からリハビリを開始しています。ICU管理中からの超早期リハビリが、高齢であっても脚力低下を来さず退院後までADL低下を最小限にする大きなキーポイントと思っています。
前述の86歳の遠位弓部大動脈瘤のオープンステント手術症例では、ICU管理中に術後2日目には立位可能、4日目で歩行器で50m歩行が可能となっています。
そのため弁手術単独手術(大動脈弁置換術または僧帽弁形成術)の6例では術翌日にICU内で歩行器歩行し平均術後12.3日で自宅に軽快退院されています。そのうち3人は10日未満で退院しています。


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透析症例では動脈硬化による心大血管疾患を合併しやすく、どの心臓血管外科施設でも開心術の5~10%が慢性透析症例です。当院腎センターは県南の地域医療に透析センターとして確立しており、今年3月までにすでに5例(全体の14%)の透析症例の開心術を行っています。透析症例の長期予後は非透析症例より不良でありますが、術後入院期間はそれほど変わりません(透析症例16.2日、非透析症例24.9日)。よって手術適応のある透析症例においては、開心術自体のリスクは、腎センターの協力を得ることで、非透析症例と同じまではありませんが、ほぼ同様になると考えています。
今までは多くの透析症例が熊本市内でしか開心術を受けられず、県南で透析症例の開心術が施設内で完結できるようになったことは、地域医療にとっても大きな一歩と思います。

担当医紹介

心臓血管外科 診療部長

毛井 純一 Junichi Kei

専門分野/冠動脈外科・弁膜症外科・大動脈外科

所属学会

・心臓血管外科専門医認定機構(修練指導者・専門医) ・日本心臓血管外科学会(指導医・専門医)
・日本外科学会(指導医・専門医) ・日本胸部外科学会(指導医・認定医・正会員)
・日本循環器学会(専門医) ・日本血管外科学会
・日本脈管学会 ・熊本大学医学部非常勤講師



研究紹介

【1,多施設共同臨床研究】

H21年度より国立病院機構の心臓血管外科を持つ全国施設と、急性大動脈解離の臨床研究を行っています。

急性大動脈解離で緊急入院時の凝固因子などの値から急性期の死亡率を予測し、手術適応決定の指標とする研究です。
来年度中にはその結果が論文として発表される予定です。

 

【2,JACVSD・NCDへの全例登録】

日本の心臓血管外科の成績を普遍的に検証し、全国の手術成績や参加施設の成績を顧みて、
今後の臨床成績向上のためにフィードバックするための全国規模の心臓血管外科手術登録のことです。
この症例登録は患者さんやその家族が拒否しない限り、すべての手術症例が全国規模のサーバ-に登録されますので、
登録希望されない場合は職員に伝えてください。