麻酔科は常勤医師4名、非常勤医師1名で構成され、外科系各科の手術麻酔管理を行っています。麻酔法には全身麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔、伝達麻酔がありますが、手術前に麻酔科医が診察を行い、それぞれの手術と患者さまの全身状態にもっとも適していると考えられる麻酔法・使用薬剤を選択して安全第一をモットーに手術を管理しています。
術後鎮痛の新しい手段として、末梢神経ブロックを取り入れたのでご紹介します。
手術終了直後は、麻酔薬が多少残存しているため、痛みを感じることは少ないのですが、病棟に戻った頃には痛みが出現してきます。その痛みは手術当日がもっとも強く、その後次第に軽減していきます。快適に術後を過ごしていただくには、術直後からの強力な鎮痛処置が重要になります。しかし、リスクの高い症例では、強力な鎮痛薬の副作用である呼吸抑制や傾眠傾向が出現しやすいため、十分量の投与が難しいことがありました。
末梢神経ブロックは、人工呼吸や全身麻酔がまだ未確立であった、麻酔黎明期に発達したものですが、当時は麻酔法の1つとして施行されていました。それを手術麻酔でなく、術後鎮痛に利用することにしました。末梢神経ブロックは最近の局所麻酔薬と併用することで、安全性に優れ、長時間鎮痛効果が持続するという特徴があります。実際、この方法を取り入れてから、術直後の鎮痛薬の使用量や疼痛による不眠も減少しました。
ハイリスク症例においても、呼吸抑制や意識レベルの低下を心配することなく術後鎮痛を行うことができるようになったわけです。
肩の腱板断裂を修復する手術は術後数日間強い痛みを伴います。
とくに手術当日の痛みは激烈です。注射や内服、坐薬の痛み止めではほぼ効かないことも多く、整形外科領域では痛い手術で有名です。末梢神経ブロックを併用することで術直後は無痛になりますが、その効果がきれると激烈な痛みが出現してきます。この痛みは時間経過とともに軽減してきますが、内服薬のみで痛みのコントロールするには丸1日程度の時間がかかり、その間は神経ブロックによる補助が必要になります。
しかし、神経ブロックによる鎮痛持続時間は12-13時間がほとんどで、その後に出現してくる痛みに対しての有効な手段はなかなかありませんでした。
そこで我々は、新しい長時間作用型の局所麻酔薬を導入し鎮痛持続時間を検証してみました(右図1)。
この薬剤を使用することで、深夜から痛みで苦しむことは激減し、朝食後に痛み止めを内服することで痛みのコントロールが可能となりました。
この数年の麻酔関連の変化は大変大きなものであります。我々は最新の知見・技術を取り入れながら、より安全で質の高い麻酔を提供していきたいと考えています。
麻酔中に得られたデータなどの個人情報を、医学の発展のため学会発表、論文掲載することがあります。その際は、個人を識別できる情報を削除した上で利用又は掲載します。