診療科案内

脳神経外科

 

 

 

 

平成28年3月より常勤医3名体制となりました。
最新の医療機器や術中モニターを導入し、安全で
確実な手術をモットーとしています。

脳血管障害(くも膜下出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳出血、頸動脈狭窄症、もやもや病など)、脳・脊髄腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、転移性脳腫瘍など)、機能的疾患(三叉神経痛、顔面けいれん)、頭部外傷、正常圧水頭症、感染症(髄膜炎、脳膿瘍)、各種の頭痛(片頭痛、緊張型頭痛)などの脳神経外科領域全般を対象としています。
また健康管理センターにおいて毎日4~5名の脳ドック検診を行っており、生活習慣病に起因する脳卒中の予防や治療にも取り組んでいます。

 

 

 

ICG蛍光血管造影が可能な手術顕微鏡を熊本県下でもいち早く導入し、脳動脈瘤クリッピング術において良好な治療成績を得ています。また神経内視鏡を用いた脳内出血の血腫除去術や、内視鏡下経蝶形骨洞手術など、従来よりも低侵襲な手術法を多く取り入れています。脳動脈瘤や血行再建術、脳腫瘍などの手術では、術中に電気生理モニター(MEP、SEPなど)をほぼ全例で行っており、合併症の低減に役立っています。また手術後短期間で日常生活へ復帰できるように、頭髪を残したままの無剃毛手術を可能な限り行っています。

 

脳血管内治療

脳血管内治療とは、頭を切開することなく、足や腕の血管からカテーテルという細い管を通して、脳の血管の病気を治療する方法です。当院では、脳血管内治療の専門医が24時間365日体制で対応しており、脳梗塞や脳動脈瘤などのさまざまな症例に対応しています。脳梗塞とは、脳の血管が詰まって脳の一部が壊死する病気です。脳梗塞は時間とともに症状が悪化し、重い後遺症や死に至ることもあります。脳梗塞の治療には、血栓溶解薬という薬を静脈から投与する方法と、血栓回収療法という方法があります。血栓回収療法は、カテーテルを通して詰まった血管に直接アプローチし、血栓を取り除く方法です。血栓回収療法は、発症から24時間以内に行うことが出来ますが、治療を早く行うほど後遺症が少なくなります。血栓回収療法を行える施設は限られており、当院は県南地域で唯一、24時間365日脳梗塞への血栓回収療法を行える施設です。当院では、脳梗塞への迅速な対応を心がけており、血栓回収療法によって多くの患者さんの命と機能を守っています。
脳動脈瘤とは、脳の血管の壁が弱くなって膨らんだ状態です。脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血という重篤な病気を引き起こします。脳動脈瘤の治療には、開頭手術と脳血管内治療があります。脳血管内治療は、カテーテルを通して脳動脈瘤の中にコイルという器具を入れたり血管にステントをいう器具を留置したりして動脈瘤への血流を遮断する方法です。脳血管内治療は、体への負担が少なく、回復が早いというメリットがあります。当院では、患者さんの病状の希望に応じて、最適な治療法を提案するようにしています。私たちはチーム一丸となって、患者様に満足される最新の医療を情熱を持って実践します。

 

 

 

 

 ほとんどのくも膜下出血が脳動脈瘤の破裂によって突然発症します。発症すると3割が死亡し、3割が後遺症を遺します。社会復帰できるのは全体の約3割程度です。発症時の症状は、突然の頭痛・嘔吐、意識障害などが一般的です。重症だと、心肺停止状態で搬送されてくることもあります。手術可能な症例は、3次元CTAにて脳動脈瘤の位置を確認し、急性期(72時間以内)に開頭クリッピング術により再破裂を予防します。しかし、その後約2週間は脳血管攣縮というくも膜下出血発症後特有の病態が原因で脳梗塞を生じることがあるため、厳重な管理が必要です。脳梗塞による後遺症が生じなくても、発症から1〜2ヶ月後に正常圧水頭症という頭蓋内の髄液吸収障害を生じてしまうことがあります。正常圧水頭症は手術治療(シャント手術)によって治癒可能な合併症です。

 

 偶然にMRI検査で発見されたり、脳ドックで指摘されることが近年多くなりました。ほとんどの方は無症状ですが、脳動脈瘤の部位によっては周辺の神経を圧迫して症状が出現することがあります。脳動脈瘤は大きさ・発生部位・形状によって破裂率が異なります。患者さんの希望や全身状態(年齢や既往症)に配慮した治療方針の検討を行っています。

 

 一般的な原因は高血圧によるものです。稀に、脳動静脈奇形・海綿状血管腫などの疾患が原因で発症することがあります。降圧剤を内服していても、降圧が不十分な状態(140/90以上が継続)だと発症します。治療の主体は血圧を下げてリハビリテーションを行うことですが、脳内血腫量が31ml以上の場合には、血腫除去術(開頭術、神経内視鏡下手術、定位脳手術のいずれか)を行うこともあります。

 

 アテローム血栓性脳梗塞の原因となる病態です。狭窄度が低い場合は経過観察可能ですが、場合によっては内頸動脈に血栓形成を生じやすくなり、それが飛散して脳梗塞を生じることがあります。頸動脈エコー・MRI・3次元CTAなどで精査を行い、治療が必要な場合(脳梗塞再発を繰り返す危険性が高い状態)は内頸動脈剥離術(CEA)もしくは頸動脈ステント留置術(CAS)を行うことがあります。


 

 これもアテローム血栓性脳梗塞の原因となる病態です。脳梗塞を発症して発見されることが多く、稀に脳ドック等の頭部精査(MRI等)で指摘されることもあります。高血圧・糖尿病・脂質異常症を合併することが多く、進行すると重症の脳梗塞を発症します。脳血流検査(SPECT)を行い、脳血流低下(血圧低下、脱水等)を生じた場合に脳梗塞を発症しやすいと判断された場合に、EC-ICバイパス(浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術)を行って新たな脳梗塞の予防を行います。


 

 頭蓋骨の内側にできる腫瘍で良性から悪性までさまざまな種類があります。また頭蓋内の組織から発生したものを原発性脳腫瘍、他臓器の癌が転移したものを転移性脳腫瘍と呼びます。腫瘍が存在する部位によってさまざまな脳神経の症状が現れます。当院で治療が完結することもありますが、熊本大学病院など他施設と連携して治療することもあります。代表的な脳腫瘍を下記に提示します。

 

 脳を覆う“髄膜”から発生する腫瘍です。原発性脳腫瘍で最も多い腫瘍で基本的には良性ですが、まれに悪性のものもあります。症状がなければ経過観察、症状を認めれば摘出術を行います。腫瘍を栄養する血管が豊富な場合は手術時の出血を抑える目的で、術前にカテーテルで腫瘍血管塞栓術を行うこともあります。

 

 脳から発生する腫瘍で良性から悪性まで多くの種類が存在します。病理診断を行うために生検術もしくは摘出術が行われ、悪性であれば化学療法や放射線治療が必要となります。良性であってもMRIなどの定期的な検査が必要です。

 

 頭の中のほぼ中央に位置する様々なホルモンを産生する下垂体にできる腫瘍です。良性腫瘍ですが、ホルモンを異常産生する腫瘍であればホルモンの働きに応じた症状が出現します。また腫瘍が大きくなると視神経を圧迫し、視力低下や視野欠損などの症状が出現します。鼻腔から神経内視鏡で摘出術を行います。

 

 他臓器の癌が脳に転移して発生する腫瘍です。状況に応じて摘出術や放射線治療を行います。原発の癌の治療も重要です。

 

 



 

 頭部を強く打撲すると、頭蓋骨骨折や頭蓋内出血(急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷)をきたすことがあります。単純な骨折の場合は保存的治療となりますが、開放骨折や陥没骨折などの場合には手術が必要となります。また頭蓋内出血が多量で意識障害を伴うような場合には、血腫除去や外減圧などの緊急手術を行います。

 

 頭部打撲から1〜3ヶ月経過して脳の表面に血腫が貯留することがあります。硬膜の下に貯まることから慢性硬膜下血腫と呼びます。軽い頭痛や半身脱力などで発症することが多く、血腫の増大に伴って徐々に症状が進行します。自然治癒することも稀にありますが、麻痺などの神経症状がある場合は穿頭血腫除去術がを行います。

 

 

 

 顔面神経に近傍の動脈が接触することで顔面に痙攣が起こることがあります。MRIで原因血管が同定されれば、神経と血管の接触を解除する手術を行います。

 

 腫瘍や血管が三叉神経に接触することで顔面に痛みを引き起こすことがあります。内服治療で効果が低い場合には、原因となる腫瘍を摘出したり血管を移動させる手術を行います。

 

 

 

 脳脊髄液の循環不全で起こる疾患で、認知症、歩行障害、尿失禁を中心にさまざまな症状が出現します。髄液を腹腔内へ流す「シャント手術」をすることで症状の改善を認めることがあります。

 

 

担当医紹介
古賀 一成

副院長

古賀 一成 Kazunari Koga

専門分野/脳血管障害・脳神経外科一般

所属学会

・日本脳神経外科学会(指導医・専門医) ・日本脳卒中学会(専門医) ・日本脳神経外科コングレス
・日本脳卒中外科学会 ・日本脳腫瘍病理学会 ・日本脳神経CI学会
・日本老年脳神経外科学会 ・日本脊髄外科学会 ・日本神経内視鏡学会
・日本脳ドック学会
noge_amadatsu

医長

天達 俊博 Toshihiro Amadatsu

専門分野/脳外科一般・脳血管障害

所属学会

・日本脳神経外科学会(専門医・指導医) ・日本脳卒中学会(専門医)
・日本脳神経血管内治療学会(専門医) ・日本脳神経外科コングレス
・日本脳神経外傷学会
nouge-taniguchi

医員

谷口 あゆみ Ayumi Taniguchi

専門分野/脳神経外科一般

所属学会

・日本脳神経外科学会(専門医) ・日本脳卒中学会(専門医)
・脳血栓回収療法実施医 ・日本脳神経外科コングレス
・日本脳腫瘍病理学会 ・日本神経内視鏡学会

診療実績
入院症例
疾 患 名 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度 H27年度
脳 血 管 障 害 脳 出 血 15 27 28 40 38 44
くも膜下出血 4 8 13 12 12 17
未破裂脳動脈瘤 12 14 8 8 14 12
脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻 など 0 1 0 0 2 0
虚血性疾患(脳梗塞、動脈狭窄 など) 2 5 1 14 12 13
頭 部 外 傷 頭蓋内出血 9 17 24 26 17 20
慢性硬膜下血腫 13 13 33 14 35 31
その他 3 2 8 10 7 0
脳 腫 瘍 原発性脳腫瘍 3 1 2 7 3 2
転移性脳腫瘍 1 0 0 1 2 2
水 頭 症 正常圧水頭症 4 2 2 4 7 6
閉塞性水頭症 0 2 0 0 0 0
機 能 的 疾 患 顔面けいれん 0 2 0 1 4 0
三叉神経痛 1 0 2 0 1 0
そ の 他 けいれん、頭痛、感染症 など 5 6 10 18 20 6
合 計 72 100 131 155 174 153

単位:例 

手術症例
疾 患 名 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度 H27年度
開 頭 術 脳動脈瘤クリッピング術 12 19 18 17 22 27
血腫除去術 2 9 5 11 9 6
微小血管減圧術 1 2 2 1 5 0
EC-ICバイパス術 0 1 0 1 0 1
脳腫瘍摘出術 0 1 0 2 2 1
穿 頭 術 血腫除去術 12 12 33 13 35 32
内視鏡下脳内血腫除去術 0 0 0 0 2 3
定位脳手術 2 0 0 0 3 0
脳室ドレナージ術 1 2 3 0 0 1
水 頭 症 手 術 LPシャント術 3 4 1 4 1 1
VPシャント術 1 1 3 5 7 6
そ の 他 頭蓋骨形成術 0 4 2 2 1 1
頚動脈内膜剥離術 0 3 1 3 8 10
血管内治療 0 1 0 0 0 0
その他 1 3 0 2 1 0
合 計 35 62 68 61 96 89

単位:例