肩が痛い、手が上げられないなどの症状は多くの方が経験します。肩関節疾患では臨床所見(肩の動き、肩のテストなど)が重要で、画像検査(レントゲン、CT、MRI、エコーなど)と併せて診断します。一般的には保存療法が施行されますが、これに反応しないとき手術療法を要することがあります。
腱板とは肩甲骨から上腕骨に向かう4つの腱(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の総称です。肩関節の安定性や細かな動きに有用な役割を果たします。腱板断裂とは腱板が痛んで切れてしまうことですが、ケガで断裂する場合と年齢的な変化で徐々に断裂する場合があります。肩の痛み(夜間の痛み、肩を動かしたときの痛み)がみられる、肩の動きが悪くなる(肩可動域の低下)、上肢の使用に肩の力が入らなくなる(肩筋力の低下)などの症状がみられます。進行すると断裂サイズが大きくなったり、軟骨がすり減って関節の変形をきたすこともあります。一方で、加齢に伴う腱板断裂があるにもかかわらず、症状のない方もおられます(無症候性断裂といいます)。この疾患は症状、臨床所見、画像所見を併せて診断します。
痛みが少なく日常生活への負担が少ない場合は保存療法を施行します。一般的にはケガがもとで断裂した場合、比較的年齢の若い(特に断裂径が大きい場合)、保存療法に抵抗する場合は手術療法が必要になります。手術は可能な限り関節鏡を用いた最小侵襲手術を選択しています(図1)。この手術法は術後疼痛が少ない、肩主動筋である三角筋への侵襲が少なく早期の機能回復が図れる、などのメリットがあります。断裂径が大きく十分な修復が行えない場合は直視下手術に移行します。
図1 | |
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断裂した腱板断端(矢印) |
肩関節鏡による側面からみた 断裂した腱板(矢印) |
アンカーを用いた腱板修復術施行 |
修復した腱板(矢印) |
図2 |
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当院の菊川医師が熊本日日新聞(2021.5.29)に掲載されました |
ヒトにとって手は重要な器官であり、直立歩行することで、手を自由につかえるようになりました。様々な動きができるようになった反面、ケガや障害の多い部位でもあります。手の痛み、しびれ、変形、使いづらさといった症状がみられます。特に多い疾患は狭窄性腱鞘炎(ばね指)、手根管症候群、肘部管症候群です。
当科では手根管症候群、肘部管症候群に対して神経伝導速度(図3)で診断しています。また屈筋腱・伸筋腱断裂に対する腱縫合術や腱移行術、TFCC損傷に対する修復術など、手外科特有の手術を行っています。
図3 | |
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通常の場合 |
手根管症候群の場合 |
刺激からの反応時間が長くなったり(赤矢印)、反応のそのものが小さくなったりします(青矢印) |
膝(ひざ)の痛みは幅広い年齢層の方々にとって悩みの種となっています。若年層では主にスポーツ外傷が原因とされ、40代以降になると軟骨の摩耗、筋力低下、体重増加が主要な要因として挙げられます。診断は身体所見(膝の動き、安定性、疼痛の特定部位など)と画像検査(X線、CT、MRIなど)を組み合わせて行い、患者の意向とライフスタイルも考慮し、手術だけでなく最適な治療選択を提供することを心掛けています。
図4 | |
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断裂した半月板(矢印) |
Fibrin clot(ご本人の血液を採取して撹拌して固めたもの: 青矢印)を用いて半月板縫合(縫合に使用した糸:赤矢印) |
図5 |
変性断裂した半月板(矢印) |
下側の変性した半月板の切除後 |
図6 | |
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断裂した前十字靭帯(ACL)(矢印) |
再建した前十字靭帯(ACL)(矢印) |
図7 | |||||
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軟骨(図では水色)が摩耗して徐々に変形性膝関節症が進行していく |
図8 | ||
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大腿骨骨切り術 |
脛骨骨切り術 |
大腿骨・脛骨骨切り術 |